
【初心者向け】ナーシングホームの基本知識|老人ホームとの違いと選び方

「ナーシングホーム」って何?多くの方が抱く疑問
ナーシングホームという言葉を聞いたことがあっても、
- 「老人ホームとは何が違うの?」
- 「どんな人が入居できるの?」
- 「費用はどのくらいかかるの?」
- 「本当に家族のためになるの?」
といった疑問を持つ方がほとんどです。
実際、介護施設には様々な種類があり、それぞれに特徴や役割が異なります。
「何となく聞いたことがあるけれど、詳しくは分からない」という状況で、大切な家族の将来を決めるのは不安ですよね。
この記事では、ナーシングホームについて知りたい方に向けて、以下の内容を分かりやすく解説します。
✓ ナーシングホームとは何か、その基本的な役割
✓ 老人ホームや他の介護施設との具体的な違い
✓ どんな方に適しているか、入居を検討すべきタイミング
✓ 費用の目安と自己負担額の計算方法
✓ 失敗しない選び方のポイント
ナーシングホームとは?基本知識をわかりやすく解説

「ナーシングホーム」という言葉を耳にしたことはありますか?言葉自体は知っていても、「老人ホームと何が違うの?」「具体的にどんなサービスを受けられるの?」と疑問に思われる方が多いのではないでしょうか。
大切なご家族の介護施設を考えるとき、たくさんの種類があってどこが最適なのか迷ってしまいますよね。特に、医療的なケアが必要になった場合、施設の選択はご本人にとってもご家族にとっても非常に重要な決断となります。
この章では、ナーシングホームの基本的な知識について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
ナーシングホームの定義と背景
ナーシングホームとは、看護師が24時間常駐し、日常的な介護サービスに加えて、痰の吸引や経管栄養といった医療的ケアを重点的に提供する介護施設のことです。
「ナーシング」という言葉が示す通り、「看護」に特化した体制が最大の特徴と言えるでしょう。近年、医療の進歩により、医療機器を使用しながら在宅で生活される高齢者の方が増えています。
しかし、ご自宅での介護、特に医療的ケアはご家族にとって大きな負担となることも少なくありません。また、一般的な老人ホームでは対応が難しい医療的ケアが必要な方もいらっしゃいます。
こうした背景から、医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者の方々が、安心して生活できる場所として、ナーシングホームの重要性が高まっています。
他の介護施設や有料老人ホームとの違い
ナーシングホームと他の介護施設との最も大きな違いは、医療ケアへの対応力です。
一般的な老人ホーム(特に介護付有料老人ホームや住宅型有料老人ホームなど)は、主に食事や入浴、排泄といった「介護(身上介護)」がサービスの中心です。
もちろん看護師が配置されている施設もありますが、24時間常駐ではなかったり、対応できる医療ケアに限りがあったりする場合がほとんどです。
一方、ナーシングホームは、看護師が24時間体制で常駐しているため、日中だけでなく夜間の急な体調変化にも迅速に対応できます。
痰の吸引、インスリン注射、ストーマ管理、在宅酸素療法など、専門的な医療処置が必要な方でも安心して入居できるのが大きな違いです。
ナーシングホームの主な役割と体制

ナーシングホームの主な役割は、病気や障がいにより医療的ケアが日常的に必要な方が、穏やかにその人らしい生活を送れるように支援することです。
終末期ケア(ターミナルケア)や看取りに対応している施設も多く、人生の最期まで尊厳を保ちながら過ごせる場所としての役割も担っています。
その役割を果たすため、以下のような体制が整えられています。
- 24時間常駐の看護師:日中・夜間を問わず、医療的ケアや緊急時の対応を行います。
- 介護職員:食事、入浴、排泄などの日常生活のサポートをします。
- 協力医療機関との連携:地域のクリニックや病院と密に連携し、医師による定期的な訪問診療や緊急時の対応体制を確保しています。
医療・看護・介護が連携したケア体制とは
ナーシングホームの強みは、「医療」「看護」「介護」の専門スタッフがそれぞれの専門性を活かし、情報を共有しながら一体的なケアを提供できる点にあります。
例えば、入居者の方の「食事が進まない」という状況があったとします。
- 介護職員は、食事の様子や好み、飲み込みの状態などを観察し、記録します。
- 看護師は、その情報をもとに、健康状態や病状との関連性をアセスメントし、必要であれば経管栄養の準備や、協力医療機関の医師への報告・相談を行います。
- 医師は、看護師からの報告を受け、診察や薬の調整を行います。
このように、多職種がチームとして連携することで、入居者一人ひとりの心身の状態に合わせた、きめ細やかで質の高いケアを実現しているのです。
ナーシングホームのメリットとデメリット

医療ケアが充実しているナーシングホームですが、入居を検討する上ではメリットだけでなく、デメリットや注意点も理解しておくことが大切です。ご本人とご家族、双方の視点から見ていきましょう。
医療ケアが充実しているメリットと安心感
ナーシングホームの最大のメリットは、何と言っても24時間体制で看護師による専門的な医療ケアを受けられる安心感です。
- 夜間や緊急時の対応力:夜間に痰の吸引が必要になったり、容体が急変したりした場合でも、看護師が常駐しているため迅速に対応してもらえます。在宅介護では家族が対応しなければならない場面でも、専門家に任せられるため、介護者の心身の負担が大幅に軽減されます。
- 医療依存度の高い方でも入居可能:経管栄養、在宅酸素療法、インスリン注射、ストーマケアなど、日常的に医療処置が必要な方は、一般的な老人ホームでは入居を断られるケースも少なくありません。ナーシングホームは、こうした医療ニーズの高い方を積極的に受け入れる体制が整っています。
- 看取り・ターミナルケアへの対応:多くのナーシングホームが看取りやターミナルケア(終末期医療)に対応しています。住み慣れた場所で、専門スタッフに見守られながら穏やかに最期の時を迎えたいと考える方にとって、心強い選択肢となります。ご家族にとっても、病院への入退院を繰り返すことなく、穏やかな時間を共に過ごせるというメリットがあります。
入居者・家族にとっての負担やデメリット
一方で、ナーシングホームにはいくつかのデメリットや注意すべき点も存在します。
- 費用が比較的高額になる傾向:24時間看護師が常駐し、手厚い医療ケアを提供する分、一般的な老人ホームと比較して月額利用料が高くなる傾向があります。特に、介護保険外のサービス(おむつ代や個別のリクエストなど)や、医療保険適用の自己負担分が加わるため、事前の資金計画が重要です。
- レクリエーションやイベントが少ない場合も:ナーシングホームは医療ケアに重点を置いているため、施設によってはレクリエーションやイベントの開催頻度が、他の介護施設に比べて少ない場合があります。日中の活動性を重視する方にとっては、物足りなさを感じるかもしれません。
- 自立度が高い方は入居できない可能性:ナーシングホームは、常時医療ケアが必要な方を主な対象としています。そのため、身の回りのことがご自身でできるような自立度の高い方や、医療依存度が低い方は、入居の対象外となることがあります。
老人ホーム・他介護施設とどこが違う?比較でわかる特徴
「ナーシングホームは医療ケアが強いのはわかったけれど、具体的に他の施設とどう違うの?」と感じる方も多いでしょう。ここでは、代表的な介護施設である「老人ホーム」や「デイサービス」と比較しながら、ナーシングホームならではの特徴をさらに詳しく解説します。
老人ホームとの機能とサービスの違いを比較
「老人ホーム」と一言で言っても、実は様々な種類があります。ここでは、特に比較されることが多い「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」とナーシングホームの違いを表にまとめました。
施設の種類 | ナーシングホーム | 介護付有料老人ホーム | 住宅型有料老人ホーム |
主な目的 | 医療ケアと介護の提供 | 生活支援と介護の提供 | 生活支援と自由な暮らしの提供 |
看護師の配置 | 24時間の常駐が基本 | 日中の配置が基本(夜間はオンコール対応など施設による) | 配置義務なし(施設による) |
対応できる医療ケア | 痰の吸引、経管栄養、在宅酸素、看取りなど幅広く対応 | 軽度の医療処置(施設による) | 訪問看護などを利用して個別に対応 |
主な入居対象者 | 医療依存度が高い方、難病、がん末期の方など | 要介護認定を受け、身の回りの介護が必要な方 | 自立〜要介護度が低い方が中心 |
サービスの提供形態 | 施設スタッフによる包括的なケア | 施設スタッフによる包括的なケア | 外部の介護サービスを選択して利用 |
この表からわかるように、最も大きな違いはやはり「看護師の24時間常駐」と、それに伴う「医療ケアの対応範囲」です。
介護付有料老人ホームも介護サービスは充実していますが、夜間の医療的ケアが必要になると対応が難しい場合があります。住宅型有料老人ホームは、外部の訪問看護などを利用すれば医療ケアを受けることも可能ですが、緊急時の対応には限界があります。
その点、ナーシングホームは医療依存度が高い方や、将来的に医療ケアが必要になる可能性を見据えている方にとって、最も安心できる選択肢と言えるでしょう。
有料老人ホームやデイサービスとの具体的な違い
【有料老人ホームとの違い】
前述の通り、有料老人ホームとの最大の違いは医療ケア体制の手厚さです。
- ナーシングホーム:看護が中心。「住まい」に「手厚い医療・看護体制」が組み込まれているイメージ。
- 有料老人ホーム(介護付・住宅型など):介護が中心。「住まい」に「介護サービス」が付いているイメージ。
日常的に痰の吸引やインスリン注射が必要な方、終末期ケア(ターミナルケア)を希望される方など、介護サービスだけではカバーしきれない医療ニーズに応えるのがナーシングホームの役割です。
【デイサービスとの違い】
デイサービス(通所介護)との違いは、サービスの利用形態そのものです。
- ナーシングホーム:施設に入居し、24時間365日の生活の場として利用します。
- デイサービス:日中だけ施設に通い、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けます。夜は自宅へ帰ります。
デイサービスは、在宅生活を続けながら日中の活動の場や家族の介護負担軽減のために利用する「通いのサービス」です。一方で、ナーシングホームは生活の拠点を施設に移し、常時介護と看護を受ける「住まいのサービス」という根本的な違いがあります。
ナーシングホームの費用相場と必要な費用項目

手厚い医療ケアを受けられるナーシングホームですが、入居を考える上で最も気になるのが費用面ではないでしょうか。
ここでは、費用の全体像を把握できるよう、初期費用や月額費用の目安、そして費用の内訳について詳しく解説します。
入居費・月額費用の目安
ナーシングホームの費用は、大きく分けて「入居一時金(初期費用)」と「月額利用料」の2つがあります。
施設の種類や立地、サービスの充実度によって金額は大きく異なります。
- 入居一時金(初期費用)
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- 相場:0円〜数百万円
- 入居時に支払う費用のことで、家賃の前払いや終身利用権の取得費用といった意味合いがあります。近年は、入居一時金が0円の「月払い方式」の施設も増えています。
- 入居一時金がある場合、一定期間内に退去すると一部が返還される「返還金制度」が設けられていることが一般的です。契約前に返還金の条件を必ず確認しましょう。
- 月額利用料
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- 相場:15万円 ~ 40万円程度
- 毎月支払う費用のことで、主に以下の項目が含まれます。
- 居住費(家賃相当額):施設の立地や居室の広さ、設備によって異なります。
- 管理費:共用施設の維持管理費や事務スタッフの人件費などです。
- 食費:1日3食の食事代です。
- 介護サービス費(自己負担分):介護保険サービスを利用した際の1割~3割の自己負担分です。
その他:おむつ代、理美容代、レクリエーションの材料費など、個別に利用したサービス費用が別途かかります。
- 費用の内訳イメージ(月額利用料)
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項目 費用の目安 備考 居住費(家賃) 5万円〜15万円 立地や居室タイプによる 管理費 3万円〜8万円 共用部分や位時間費など 食費 4万円〜6万円 1日3食の費用 介護保険自己負担 2万円〜4万円 要介護度や所得による(1割〜3割負担) その他(雑費など) 1万円〜5万円 おむつ代、医療費、理美容代など 合計 15万円〜40万円 あくまで目安になります このように、月額利用料は様々な費目の合計で構成されています。特に、介護保険の自己負担額やおむつ代などの変動費も考慮して、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。
医療・介護サービスごとの負担金額
月額利用料の中でも、特に内訳が分かりにくいのが「医療」と「介護」のサービス費用です。これらは公的な保険が適用されますが、自己負担分を支払う必要があります。
- 介護保険サービスの自己負担
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- ナーシングホームで受ける日常生活の介護(食事、入浴、排泄の介助など)や、看護師によるケアの一部は介護保険の対象です。
- 自己負担額は、要介護度や本人の所得に応じてサービス費用の1割〜3割となります。要介護度が高いほどサービス量が増えるため、自己負担額も高くなる傾向があります。
- 医療保険サービスの自己負担
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- 医師による訪問診療や、処方された薬代、訪問看護の一部などは医療保険の対象となります。
- 自己負担額は、年齢や所得に応じてかかった医療費の1割〜3割です。
- これらの費用は、施設の月額利用料とは別に、利用した分だけ医療機関や薬局へ直接支払うのが一般的です。
- 保険適用外の費用(全額自己負担)
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上記以外に、以下のような費用は全額自己負担となります。
- おむつ代、パッド代
- 日用品費(歯ブラシ、石鹸など)
- 理美容代
- レクリエーションの材料費
- 個別の要望によるサービス費用(買い物代行など)

特におむつ代は、使用量によって月々の費用が大きく変動する可能性があるため、事前に金額の目安を施設に確認しておくと安心です。
費用を抑えるためのポイント
手厚いケアが受けられる一方、費用負担が大きくなりがちなナーシングホーム。しかし、様々な公的制度を活用することで負担を軽減できる可能性があります。
- 1.高額介護サービス費制度
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同じ月に利用した介護保険サービスの自己負担額の合計が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合、超えた分の金額が払い戻される制度です。市区町村の窓口で申請することで適用されます。
- 2.高額療養費制度
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医療保険の自己負担額が高額になった場合に、上限額を超えた分が払い戻される制度です。加入している公的医療保険(国民健康保険、後期高齢者医療制度など)に申請します。
- 3.高額介護合算療養費制度
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1年間(8月1日〜翌年7月31日)に支払った「医療保険」と「介護保険」の自己負担額を合算し、基準となる上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。医療と介護の両方を利用するナーシングホーム入居者にとっては、特に重要な制度と言えます。
- 4.自治体独自の助成制度
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お住まいの市区町村によっては、独自の助成金や補助金制度(居住費の補助など)を設けている場合があります。一度、役所の高齢者福祉担当窓口に相談してみましょう。
- 5.入居一時金0円の施設を選ぶ
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初期費用を抑えたい場合は、入居一時金が0円の施設を選ぶのも一つの方法です。ただし、その分月額利用料が割高に設定されている場合もあるため、長期的な視点で総費用を比較検討することが大切です。
これらの制度は、基本的にご自身での申請が必要です。利用できる制度がないか、施設の相談員やケアマネジャー、市区町村の窓口に積極的に確認することをおすすめします。
まとめ:ご家族に最適な選択をするために
本記事では、ナーシングホームの基本的な知識から、他の介護施設との違い、メリット・デメリット、そして費用について詳しく解説してきました。
最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
- ナーシングホームは「看護」が中心の医療ケアに特化した施設
24時間看護師が常駐し、痰の吸引や経管栄養など、日常的に医療ケアが必要な方でも安心して生活できる環境が整っています。終末期ケアや看取りに対応している施設も多く、人生の最期まで穏やかに過ごしたいと願う方のための住まいです。 - 他の施設との最大の違いは「医療ケアへの対応力」
介護が中心となる一般的な老人ホームとは異なり、夜間の急な体調変化や専門的な医療処置にも迅速に対応できる点が最大の強みです。 - メリットは「安心感」、デメリットは「費用」と「活動性」
医療依存度の高い方を受け入れられる安心感は大きなメリットですが、その分費用は高額になる傾向があります。また、医療ケアに重点を置くため、レクリエーションなどが少ない場合があることも理解しておく必要があります。 - 費用は「月額15万〜40万円」が目安。公的制度の活用を
入居一時金(0円の施設もあり)のほか、月額利用料がかかります。介護保険・医療保険の自己負担に加え、おむつ代などの実費も必要です。負担を軽減するためにも、「高額介護サービス費」などの公的制度が利用できないか、必ず確認しましょう。
ナーシングホームは、医療ニーズの高い高齢者の方々と、そのご家族にとって非常に心強い選択肢の一つです。しかし、ご本人にとって本当に最適な場所かどうかは、健康状態やライフスタイル、そして経済的な状況によって異なります。
今回の記事で得た知識をもとに、まずはご家族でしっかりと話し合い、ケアマネジャーや施設の相談員といった専門家にも相談しながら、後悔のない施設選びを進めていってください。
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